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論文・学会発表・研究費List of Papers and Grants

バイオトレーサ開講30周年記念

核医学開講30周年記念

2005年10月9日に核医学講座開講30周年記念祝賀会が開かれました。全国より核医学・放射線に関連する多数の教室から、また、金沢大学教授の先生方にもご出席を賜りましたことを厚く御礼申し上げます。

これまでに当教室で研修や研究をされた諸先生、関連病院の病院長の諸先生、また核医学開講の当初より現在まで共に開発に携わった放射性医薬品あるいは核医学機器メーカーの開発陣も含めて、全体で約150名の多数のご出席を頂きました。

日本核医学会の理事長(2005年まで)の利波紀久教授の講演は、核医学の歴史と共に、当教室の歴史を振り返る機会となりました。

教室の歴史

シンチスキャナーの発明が1950年であり、1954年には早くも久田欣一前教授によりP-32治療が施行されました。

その後1973年には、平松博放射線科教授のご尽力もあり、初代久田欣一教授(現名誉教授)のもとに核医学講座が日本で初めて開講されました。

以来、現在では核医学検査の主流となっている様々な放射性医薬品開発、機器開発、優れた核医学診断医の養成など、研究、教育、診療の各領域で貢献できる機会を得ました。

現在、日本核医学会の英文機関誌となっているAnnals of Nuclear Medicineも当時の久田欣一理事長のもとに1987年に刊行されています。現在はインパクトファクターも取得しており、まもなく20周年を迎え、国際的に評価される医学誌となっています。

1995年より講座主任として就任の利波紀久教授のもとに核医学教室は、教授のメインテーマである腫瘍核医学の研究・診療を中心に、甲状腺診療、心臓核医学、中枢神経核医学など、全身臓器の広範な領域でさらに発展しています。

当科で研修した外国人研究者は45名を数え、それぞれ自国に戻っても核医学の基礎を作り発展させる活動を通して貢献しているのは嬉しいことです。

各分野の活動

腫瘍核医学の領域では、利波教授の開発によるTl-201を中心とする癌診断はすでに核医学領域で日常検査として利用されています。さらに、がん集積のモノクローナル抗体等、免疫核医学をはじめとする放射性医薬品の基礎実験とイメージングに適した放射性医薬品の開発にも力を入れています。

当院の内部照射治療は世界でも有数の専門施設であり、甲状腺の関連のヨード治療はもちろんですが、さらに広範な新規薬剤に対応できるように放射線障害防止法の認可も受けています。褐色細胞腫や神経芽細胞腫に特異的に集まるI-131メタヨードベンジルグアニジン(MIBG)を利用した内照射治療のためには全国より患者が来院しています。現在、RI病棟では年間約100件の甲状腺およびMIBGの治療が行われています。

癌の手術においてリンパ節転移の有無は手術範囲の縮小大きく影響しますが、この判定に貢献するものとしてセンチネルリンパ節検査も、当科の重要な取り組みのひとつです。外科、皮膚科等との協力の下に研究も進められており、2005年11月には金沢において第7回センチネルノードナビゲーションサージェリー研究会も開催されました。

心臓領域は現在、治療へのインパクトもあり、最も役立つ検査のひとつです。当科でも、定量化のための基礎研究や多施設研究でも中心的な役割を担っています。虚血心で重要な領域である心筋血流評価に加え、心筋症での代謝や心筋の代謝や交感神経のイメージングが、診断や予後評価に重要であることを世界に先駆けて発表してきました。さらには虚血心のアポトーシスイメージングに関して先進的研究を行い、分イメージングへの核医学の流れにも貢献しています。心臓核医学は米国でも、虚血性心疾患の治療や予後に大きく貢献する診断法として利用が急速に広がり、現在エビデンスが確立している重要な分野です。

中枢神経では現状では脳の血流の診断が中心ですが、定量法の開発や受容体に関する研究も進行中です。

アイソトープ部の検査件数は、年間約7500件、5000人の核医学検査が施行されています。

最近の学会の主催

当科の主催した学会の主なものとしては利波紀久教授の下で、

  • 2001年の第41回日本核医学会総会(金沢)
  • 2004年の第2回日韓中核医学会(金沢)
  • 2004年の第12回心臓核医学会(京都)
  • 2005年11月のセンチネルノードナビゲーションサージェリー研究会(金沢)などがあげられます。

最近のがん診療

今後のがん診療への展開としては、ストロンチウム-89の骨転移治療が2006年中にも広範囲の骨転移をもつ患者の疼痛対策として利用できる見込みです。

また、本年よりポジトロン放射性医薬品のF-18フルオロデオキシグルコース(FDG)の市販供給が開始されました。半減期が約2時間と短いため、当地区では羽咋の先端医学薬学研究センター(久田欣一センター長)のサイクロトロン施設より供給されます。癌組織ではブドウ糖の代謝が活発であることを利用したFDGはマスコミなどの注目度も高く、すでに日本核医学会を中心に、PET認定医制度がスタートしています。

今年度の内に国内で、サイクロトロンは110台、PETおよびPET/CTが186台が導入される見通しであり、厚労省の認可の元で実質的に診療が開始される次年度にはさらに現在の適応疾患であるがん、心臓、脳の各領域で普及するものと予想されています。当大学病院でもPETが導入できるように準備を進めています。