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SPECTによる定量評価の方法

従来よりPETと比較してSPECTの欠点としてあげられた定量性に関する限界も,最近のコンピュータ技術の進歩により,真の定量化にむけ実現の可能性が見えてきました。また,この定量化に相応しい,血流,代謝,神経機能などの新しい放射性医薬品の開発が進み,この定量技術が活かされる環境も整いつつあります。核医学は本質的に機能画像であることがその出発点であり,この点が核医学の診断学における重要な特徴ともなっています。

SPECT技術とデータ収集法

定量を語る際にカメラの性能としての

  • 分解能の改善
  • 感度の改善

が定量の基本的な要素であることはいうまでもありません。

さらに、SPECTのデータ収集法は画像収集の基本となるため、次にあげるようないくつかの要素が定量に関連して考慮されてきました。

  • 分解能の向上:部分容積効果の改善へ
  • 多核種同時収集:血流と各種機能の同時評価
  • 心電図同期収集:壁運動と定量改善
  • 動態収集:トレーサーのモデル化との併用
  • 360゜/180゜/90゜直交 収集:定量化の流れで見直し必要
  • カメラ数と配置の多様化:最適な選択は?

散乱と吸収補正に関する基礎的技術

核医学画像では避けることのできなかった散乱と吸収の補正もようやく現実的な解決の方向が見えています。

散乱の補正に関しては,In vitroのように単純に光電ピークのエネルギーウィンドウの定数倍を散乱成分として減算する方法では誤差が大きくなります。そこで,

  1. エネルギースペクトルの測定から散乱補正する方法
  2. 複数のエネルギーウィンドウを利用する方法
  3. デコンボリューション法

などが提案されています。筆者らのOgawaよる3エネルギーウィンドウ(TEW)法の経験では、実際的な補正が達成できることが確認されています。

吸収補正については、吸収により体内深部のカウントの低下が生じたり,乳房,横隔膜などにより日常診療で経験されるアーチファクトの軽減と定量化の改善の観点からも,吸収の補正が望まれていました。そのためには,均一吸収体でない体内において,個別に吸収係数を計算し,スライス毎に補正を適応する方法が不可欠です。

そのためには,トランスミッション・エミッションSPECTが必要となりますが,現在対象となっている核種の物理的特性を示します。

核種 γ線 X線 半減期 壊変形式
99mTc 141keV(89%) - 6時間 核異性体転移
201Tl 167keV(10%) Hg-X 71keV 73時間 軌道電子捕獲
153Gd 97keV(28%)
103keV(20%)
Eu-X41.5keV 242日 軌道電子捕獲
57Co 122keV (86%)
136keV(10%)
- 272日 軌道電子捕獲
241Am 60keV(36%) - 432年 α壊変

SPECTのガンマカメラ数とその配列も2検出器角度可変型など多彩になっており,線源も線線源をスキャニングさせる方法,面線源を用いる方法,線線源をシート上に配列する方法などがあります。また,多検出器では特に線線源に相対する位置に,コンバージング型や非対称型のコリメータを配置するなど工夫されています。

吸収補正にあたり考慮される要素としては、以下のようなものがあります。

  • 線源:
    • 面線源,シート型線線源,線線源
    • 線源の固定型とスキャニング型
  • カメラ数:
    • 1検出器
    • 2検出器(対向,直交,可変)
    • 3検出器
  • コリメータ:
    • 平行コリメータ
    • スラントホールコリメータ
    • コンバージングコリメータ
    • 非対称ファンビームコリメータ

しかしながら,投影の視野から身体の端がはずれることによるトランケーションの効果,補正データとの位置ずれの影響,最善のトランスミッション線源の選択,体動の影響など,まだ基本的な押さえなければならない因子も多く検討がすすめられています。

臨床への応用

中枢神経のように比較的均一で静止した臓器と,心臓のように周辺の組織が複雑で動きのある臓器では定量の精度も変わってきます。実際に実用的でなければ,そして最終的には診断にインパクトを与えるものでなければこの方法も利用する価値がありません。現状での応用研究のいくつかを見ると,イヌ心筋の放射能についてSPECTによる定量を行い、摘出心筋組織標本とよく相関するとの報告があり,また臨床でも心筋SPECTで,感度,特異度ともに 改善したと報告されています。

左より心筋短軸像の 現画像|散乱補正|吸収補正|散乱+吸収補正(慶応大学放射線科データ)。下壁と中隔のカウント差、内腔と心筋のコントラストの差に注目して下さい。
検査のthroughputの観点から短時間での収集が強調される中で,研究的な有用性はあるにしても,この方法が確かな地位をルーチン検査の中に得られるのかどうか,今後の展開が期待される領域となっています。

References

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