冠動脈閉塞後に再灌流に成功しても心機能障害(すなわち壁運動異常)が持続し、壁運動回復が遷延することが知られており、stunned myocardiumあるいは気絶心筋と呼ばれています。
もともと実験的研究から明らかになったものですが、臨床的にはこのような状態は7ー10日間程認められることが多く、心筋虚血の重症度とも関連します。
定義として以下の病態を含みます。
hibernation(冬眠)は心筋壊死を免れた慢性的な低灌流部位で収縮の低下がおきている病態と考えられ、臨床的検討から生じた概念です。いわば血流低下に対する心筋の自己防御適応反応(down regulation)と考えられ、再灌流が成功すると心機能が改善します。
最近の実験的研究やポジトロン核医学(PET)による検討では、血流減少が少ないことも報告されるようになり、慢性的な適応現象というよりも,むしろ,慢性的に繰り返された気絶心筋の状態ではないかとの見方がされるようになりました。特に高度狭窄の末梢部では慢性的なhibernating myocardiumが起こるため,血流低下はhibernationの原因ではなく,むしろ結果と考えられます。
そこで,より広義には,慢性的hibernating myocardiumは「冠動脈血行再建で機能が回復するような心筋領域」と考えることができます。
Hibernation領域の生存心筋部位では,収縮予備能が保たれている症例は30-50%ほどであり,収縮予備能を見る方法は核医学イメージングよりも感度は低いとされています。一方核医学的には,安静時血流は正常~低下ですが,F-18 FDGでみると糖代謝が保たれており,交感神経イメージングでみたMIBG低下と糖代謝とのミスマッチが見られます。