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心臓核医学で得ることのできる情報

心臓の画像診断

近年の画像診断の発展には目覚ましいものがあります。一般的な心疾患診断の手法としては、血液の生化学的検査、胸部の単純写真、心電図に始まり、超音波検査は日常外来で頻用されています。さらに心臓のカテーテル検査による診断、治療も積極的に行われるようになっています。加えて超高速CT、核磁気共鳴イメージングなどもいくつかの領域では有用性が報告されるようになってきました。このような状況のもとで、核医学検査が果たす役割はどのようなものでしょうか。

核医学の特徴は?

核医学の特徴を考えるときに大切な点は、核医学が本来トレーサー(追跡子)を用いる検査法であることです。動物実験では、体内の特定の物質の動きを追跡する方法として、放射性同位元素を用いたオートラジオグラフィーがあります。何らかの物質が体内をどのように移動し、組織に取り込まれ、代謝され、排泄されるのかを全身または臓器のスライスを作ることによって調べるものです。核医学もこれと全く同様の原理によって、ただし死後の状態ではなく、生きて活動している状態で、微小血管レベルでの異常や臓器や細胞の異常を検査できることに核医学の基本的役割があります。

このような核医学の進歩を支えてきた要素が3つあり、それは

  • 優れた特徴をもつ放射性医薬品の開発(薬学)
  • 情報を検出し画像化し定量化する技術開発(工学)
  • その情報をどのように医学的に利用するのかという臨床応用(医学)

であり、各分野で日々進歩が見られています。

形態画像と機能画像

核医学でも心臓は心臓の形として描画され、確かに形態画像ではあるのですが、上に述べたとおりその特徴は機能の画像であることです。従って、心筋シンチグラフィと一口にいってもそれが、どのような機能を示すのかをはっきり理解する事が必要です。以下に、他の画像と比較しての核医学の利点を考えながら、そのいくつかを紹介します。

心臓核医学で見ることのできる情報

心筋血流

心カテーテルによる検査は、冠動脈疾患に非常な重要な血管の狭窄病変や側副血行路を検出できます。一方、Tl-201による心筋血流シンチグラフィは、より末梢の心筋細胞自体の血流を反映しています。さらに、運動などの負荷が加わったときの、心筋の血流の変化を知ることができるのも、大きな利点となっています。例えば、冠動脈造影で狭窄率が99%であるとしても、その末梢の心筋が生きているかどうかは、全く別の問題であり、両者は相補的な情報となります。また仮に、冠動脈の血管形成術により冠拡張に成功したとしても、もし末梢の心筋が生きていないなら、成功とは言えません。このような意味で、診断上だけでなく、心筋の生存可能性評価による治療の適応決定や、治療効果の判定、予後予測などに、重要な役割を果たしています。心筋症など、冠動脈造影で直接評価できない領域も、その心筋性状の評価に核医学が良い適応となっています。

図はTl-201の運動負荷による労作性狭心症の評価の例です。左パネルでは運動時の下壁の虚血と安静時再分布を認めます(右冠動脈90%狭窄)。経皮的冠動脈形成術(PTCA)後は中央パネルに示すように改善しています。半年後に再び右パネルに示すように虚血を認めます(右冠動脈99%狭窄)。

最近は、Tc-99m標識製剤を利用する施設も増えています。現在利用できる放射性医薬品としては、Tc-99m MIBIとTc-99m tetrofosminがあります。いずれも血流に比例して心筋内に取り込まれた後、経時的変化が少ないため、また投与量を増やせるため、鮮明なSPECT画像を得ることができます。同日に負荷と安静の検査を施行する場合(一日法)には、2回の注射が必要で、2回目の投与量を1回目の2-3倍にします。また、同時に心電図に同期させてデータをとることにより、壁運動と血流の同時評価が可能になっています。

心機能

壁運動自体は超音波で手軽に評価できるようになっています。これに対して、Tc-99m標識赤血球によるRIアンジオグラフィや心電図同期心プール検査では拍出量や通過などの全体的な血行動態や、負荷に対する心機能予備能をみるのに適しています。また、検者間の再現性がよく定量誤差が少ないことも利点です。

急性梗塞イメージング

急性梗塞自体の診断は多くの場合病歴や心電図、生化学検査などで可能です。しかしながら、核医学の急性梗塞イメージングは、臨床的に確定できないときだけでなく、梗塞部位や梗塞量の推定、右室梗塞の評価、Tl-201との併用による心筋生存性の評価にも用いられます。この目的には現在Tc-99mピロリン酸(将来的には抗ミオシン抗体も)が用いられています。

図の左はTl-201、右はTc-99mピロリン酸(PYP)による2核種同時収集です。

 
脂肪酸代謝イメージング

心臓における収縮のためのエネルギー産生は基本的には好気的であり、酸化のためには脂肪酸が基本的な基質となっています。脂肪酸イメージングは、他の検査法では直接評価できない核医学特有の分野であり、血流と異なった代謝の観点から心筋の情報を得ることのできる方法として注目されています。 現在のところ、本邦で用いることができるのはI-123 BMIPPですが、虚血心筋や早期の心筋障害の診断、心筋生存性の評価、心筋症の評価などに有用性が認められています。
図は肥大型心筋症の症例であり、体軸断層で中隔から心尖部に肥厚があります。Tl-201では、中隔の集積も不均一で、血流低下と線維化を反映しています。I-123 BMIPPの脂肪酸イメージではさらに広範囲の代謝障害があることが分かります。

交感神経イメージング

これも他の方法で得にくい特異な領域の一つです。I-123 MIBGはノルエピネフリンと類似の体内挙動を示し、交感神経終末に摂取され、放出され、再摂取されます。心筋は交感神経の豊富な支配があり、明瞭にイメージングできますが、現在、虚血や梗塞後の除神経や再神経支配、心筋症、心不全、不整脈などでの異常と応用が進められています。
図の左パネルは正常者、右パネルは拡張型心筋症で、前面像です。心臓と縦隔の平均カウントの比(H/M)は左の正常例では2.6、右の症例では1.5と低値を示しています。

炎症イメージング

心筋炎などの炎症性疾患やサルコイドーシスなどにGa-67シンチグラフィが用いられ、診断や治療効果の判定に利用されています。施設によっては、この目的のために白血球シンチグラフィも施行されています。

おわりに

上に述べたある領域は、例えば血流評価のようにすでに臨床に不可欠な情報提供手段として評価され定着しています。あるものはまだ歴史が浅く、現在新しい知見が蓄積されつつある段階です。しかしながらその基本的特徴は、いずれも機能の情報であることであり、用い方によって、早期診断や、予備能評価、治療計画や経過観察、予後評価などにその有効性が期待できます。
この項の概要は、Nuclear Medicine Update (Toshiba) 1995.9 Vol 3 (中嶋憲一著)に基づいています。
Version 2.0 加筆(April 24/98), 3.0加筆(Feb 7/99)