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PETによる腫瘍、心臓、がんの診断

PET(ペット)とは

PET(ペット)とはポジトロン断層撮影法(Positron Emission Tomography)の頭文字をとったものです。
PET検査では、ポジトロン(日本語では陽電子)を放出する放射性医薬品を、静脈から注射します。
一般的に保険診療として最もよく用いられている、PET用薬剤は、F-18フルオロデオキシブドウ糖(FDG)と呼ばれる糖の性質を持つ薬です。この項では、FDGを中心にその検査を説明します。
この薬剤が体の中を移動して、がん、心臓や脳など身体の様々なところに集まる様子を、からだの外からPETと呼ばれる特殊なカメラで撮影します。
右の絵はFDGの集積を前から見た画像で、生理的な分布を示しています。

この分布を見ると...

  • 脳は通常たくさんのブドウ糖を使うため高い集積があります。
  • 心臓はブドウ糖が集まりますが、集積度は食後の経過時間によります。
  • 腎、尿管、膀胱には排泄されたFDGが集積しています。

X線CTやMRI検査が、主に病変の形をみて診断するのに対して、FDG-PETではからだの中の糖代謝の変化をみて、病気の診断をします。

PETってどんな病気で役にたつの?

PETはがんを早く見つけ、治療すれば治る患者さんの治療方針を、的確にたてる時に役に立ちます。

がんは日本人の死因の第一位にあげられる病気です。

PET検査は、がんの診断に威力を発揮する、最先端の技術で、その特徴は..

  • がんを早期に発見します。
  • がんの進行状態や再発、転移も診断できます。
  • 全身の検査が一回でできます。このため、全身へのがんの広がりだけでなく、予想外の部位のがんが発見できることもあります。
  • FDG検査では、ほとんど副作用や苦痛がありません。

現在保険適用になっている悪性腫瘍は、以下のとおりです。

  • 肺癌
  • 乳癌
  • 大腸癌
  • 頭頚部癌
  • 脳腫瘍
  • 膵癌
  • 悪性リンパ腫
  • 転移性肝癌
  • 原発不明癌
  • 悪性黒色腫
  • 食道癌
  • 子宮癌
  • 卵巣癌

FDG-PETですべてのがん分かるわけではなく限界もあります。
一般的には悪性の病変に集まりやすいのですが、集積が少ないがんもあります。例えば、早期胃がん、前立腺がんなど一部のがんはFDG集積が高くありません。良性であるにもかかわらず高い集積がみられる腫瘍もあります。詳細はPET専門医にご確認ください。
この方は乳癌ですが、左の胸に黒く見える集積があり乳癌であることが分かります。幸い、転移はどこにも見られません。

また、X線CTと組み合わせたPET-CTでは、乳癌の形とPETのFDG集積を同時にみることができます。
左上図が胸部のCT像、右上図がPET像、左下図はその両者を重ねた画像です。

心臓病では、心筋梗塞後の生存性をみるために用いることができます。

  • 食事の欧米化に伴い日本でも狭心症や心筋梗塞といった心臓の病気が増加しています。心筋血流をみるSPECT検査と合わせて、PET検査ではより精度の高い診断ができます。
  • 「生存性」の診断とは、心筋梗塞後、治療により心臓の収縮機能が戻る可能性のある心筋を診断することです。

脳疾患の診断にも有用です 。

  • FDG検査は、難治性部分てんかんで外科切除が必要な場合の検査は保険適用になっています。
  • アルツハイマー型認知症などの早期診断にも有力な検査法として注目されていますが、現在は保険適用外です。

検査の流れ

検査前は4-6時間絶食です。水は飲むことができます。
薬剤を静脈から注射します。
薬が全身に行きわたるのを待っていただきます。(約60分)
検査は台のうえで寝ているだけです。(約15-30分)
薬剤の副作用もなく、被ばく量も体に影響がない安全な量です。
検査は、検査目的、体格等により撮像回数、撮像時間、待ち時間等を変更することがあります。

実際の検査依頼や注意点については、担当医とご相談下さい。「金沢大学のPET診療のご案内」をご参照下さい。