Case KT02
腫瘍随伴性骨軟化症
Tumor-induced osteomalacia
症例解説と読影のポイント
- 画像をどう読むか
- 胸部XP:脊椎の変形(後弯+側弯)と左右対称的な肋骨の変形および変形部の骨硬化像がみられる。
- 胸部CT:胸部XPでみられた肋骨の変形部に対応して偽骨折(骨長軸に直行する細く短い帯状の透亮像で周囲に軽度の硬化像を伴う。右側でより顕著である)がみられる。
- 骨スキャン:胸部XPとCTでみられた肋骨の偽骨折の部分とその他の偽骨折の部分(主に仙骨、両側腸骨、座骨、恥骨、股関節に特徴的)にhot spotsがみられる。
- 解説
- 症例は、舌の腫瘍から産生された因子(phosphatoninと呼称されている)の作用によって発症した骨軟化症である。Phosphatoninは単一因子なのか、あるいは複数の因子かはまだ結論がでていないが、これまでに同定されているものにFGF23(fibroblast growth factor 23)がある。FGF23は腎に作用し、尿細管からのリンの再吸収抑制、ビタミンDの活性化を抑制して骨軟化症を起こす。臨床所見としては、低リン血症、腎尿細管でのリン再吸収障害、血清カルシウム正常〜正常下限、活性化ビタミンDの低下、血清ALP増加、PTH、PTHrP正常がみられる。
- FGF23を産生する原腫瘍としては、中胚葉由来の血管成分に富む良性腫瘍が多い。Hemangiopericytoma、giant-cell granuloma、cavernous hemangioma、fibrous xanthoma、osteoblastomaなどがある。
- 悪性腫瘍が原腫瘍になる場合は良性の場合の十分の一で非常にまれであり、malignant soft-tissue sarcoma、malignant neurinoma 、malignant histiocytoma、prostate cancer、oat-cell lung cancerなどがある。自験例はmalignant histiocytomaであった。
- 骨軟化症ではXPで偽骨折がみられるのが特徴の一つで、その好発部位は、骨盤、大腿骨、肋骨、肩甲骨、脛骨、橈骨、尺骨、中足骨、中手骨、指趾骨であり、両側性にみられることが多い。臨床症状として、関節痛、骨痛、筋力低下、歩行障害がみられ、進行すると脊椎後弯、側弯、身長の低下を生じる。自験例でも全ての症状がみられ、身長は2年間で167cmから151cmへと急激に低下した。治療は原腫瘍の全摘である。全摘によって低リン血症、腎尿細管でのリン再吸収障害、活性化ビタミンDの低下は劇的に改善化され数日で正常化する。腫瘍全摘が困難な場合には、保存的に活性化ビタミンD及びリン酸塩の補充療法が行われる。自験例では舌腫瘍摘出術によって舌の2/3が摘出されたが残端+であり、またfollow upの4ケ月後のCTでも残存腫瘍の増大が確認されている。原腫瘍が舌腫瘍ということもあって全摘はされず上記の保存療法がおこなわれているが、術後4ケ月でもまだ軽度の低リン血症が残っている。
- まとめ
- 骨スキャンで偽骨折の好発部位に一致して多発性のhot spotsがみられる場合には腫瘍随伴性骨軟化症の鑑別が必要である。
- 文献
- (1) Lee HK, Sung WW, Solodnik P, Shimshi M. Bone scan in tumor-induced osteomalacia. J Nucl Med 1995; 36:247-249.
(2) Kumar R. Tumor-induced osteomalacia and the regulation of phosphate hemostasis. Bone 2000; 27:333-338.
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Update: May 2, 2003