Case HE05
Hepatic adenoma
症例解説と読影のポイント
- 症例
- 10歳代後半 女性
- 検診で肝機能異常を指摘され受診、US上腹腔内腫瘍を指摘された。
- 既往歴:妊娠歴および避妊薬の服用歴はない。
- 検査成績:LAP;117、γ-GTP;98 、他の肝機能は正常範囲、HBs Ag(-)、 HCV Ab(-)、 AFP;2、PIVKA II;161。
- 画像をどう読むか
- CTで肝臓に接する腫瘍が認められた。内部は不均一で腫瘍内にいくつもの結節があるような所見(nodule in nodule appearance)を示した。肝よりややhighdensityであり、一部に石灰化を思わせる所見も認められた。造影にて肝よりもすこし強い早期濃染を示した。
- MRIでは、T1,T2とも肝と同等の信号強度を示した。
- Angiographyで腫瘍は肝動脈より栄養されていることが証明され、肝より有茎性に発育した腫瘍と判明した。腫瘍はhypervascularであり、毛細管相で強く染まり、腫瘍辺縁部に拡張した栄養血管が認められた。FNHに特徴的なspoked-wheel patternは認められなかった。
- 99mTc-スズコロイド肝スキャンで腫瘍部に肝より弱い不均一な集積が認められた。
- 鑑別診断
- Hepatic adenoma
- Focal nodular hyperplasia (FNH)
- Hepatocellurar carcinoma(HCC)
- 画像診断
- 若年女性に認められた多血性の原発性肝腫瘍であり、上記の鑑別診断が挙げられた。肝被膜直下より有茎性に発育し、内部が不均一で一部に石灰化を伴うこと、栄養血管が腫瘍辺縁より分布していること、慢性肝疾患の合併がないこと、腫瘍マーカーはPIVKA IIのみ著明な上昇が認められたこと、コロイド肝スキャンにて不均一な取り込みが認められたこと等より判断してHepatic adenomaが最も強く疑われた。腹腔内出血の危険性があること、悪性である可能性が否定しきれないこと等より手術摘除が施行された。
- 病理診断
- 腫瘍は多結節性の肉眼所見を呈しており、内部に出血を伴っていた。顕微鏡所見上は小葉構造をもたず、細胞異型の乏しい腫瘍であり上記と診断された。
- 考察
- コロイド肝スキャンにて腫瘍へのコロイド取り込みが証明されたことが、鑑別診断上有用であった症例と思われる。Hepatic adenomaへのコロイド取り込みは低頻度ながらも(20%前後)認められており、取り込みがみられた場合、Hepatocellurar carcinoma(HCC)との鑑別に有用な所見となりうる。(ただし、Hepatic adenomaとHCCとの鑑別は病理学的にもしばしば困難な場合があり、注意を要する。)
- Hepatic adenomaへのコロイド取り込みの有無を規定する病理組織学的差異は不明である。
- 本症例のように不均一な取り込みがみとめられたHepatic adenomaの報告がいくつかあり、Hepatic adenomaに特徴的な所見と考えられる。取り込みが不均一となる理由も明らかでないが、腫瘍内の変性や出血等が関与しているものと推察され、FNHとの鑑別上有用な所見になりうると思われる。
- 文献
- Kume N, Suga K, Nishigauchi K, Shimizu K, Matsunaga N. Characterization of hepatic adenoma with atypical appearance on CT and MRI by radionuclide imaging.;Clin Nucl Med. 1997 Dec;22(12):825-31.
- Davis DC, Wulfeck D, Donovan MS. Hepatocellular adenoma case report with Tc-99m SC uptake and radiologic correlation. Clin Nucl Med. 1996 Jan;21(1):8-10.
- Lubbers PR, Ros PR, Goodman ZD, Ishak KG. Accumulation of technetium-99m sulfur colloid by hepatocellular adenoma: scintigraphic-pathologic correlation. AJR Am J Roentgenol. 1987 Jun;148(6):1105-8.
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Update: Jul 18, 2003