第53回北陸核医学画像カンファレンス
今回は金沢都ホテルでの開催です。2002年9月7日(土)15:00〜18:00
画像統計解析法の基礎- 3D-SSPを中心に
兵庫県立姫路循環器病センター 放射線科:石井一成 先生
- 画像を統計を使った手法で解析しようとする方法が昨今注目され、臨床の場でも応用されている。この手法の概念は、それぞれ大きさ・形の違った個々人の脳を標準脳(同じ座標系)に変換して、つまり同じ土俵の上に持っていくことにより局所の異常部位をピクセル或いはボクセル毎に統計を行い研究、診断に役立たせようとするものである。従来のROI法ではROIの設定に主観が入ったり、再現性の問題、全脳すべてを網羅できないといった欠点があるがそれを克服することができる。
- 主にstatisticalparametric mapping (SPM)とthree
dimensional stereotactic surface projections
(3D-SSP)があげられる。SPMはもともと脳賦活試験用に開発されたものであるが、3D-SSPは研究だけでなく、臨床にも応用することを最初から目的に開発された。今回は臨床でよく使用されつつある3D-SSPを中心に臨床使用するにあたり知っておきたい基礎を述べたい。
- 3D-SSPはMichigan大学のMinoshima(現シアトルWashington大学)らにより開発されたPET・SPECTによる代謝・血流画像の解析方法である。この解析法の特徴は、まず、大きさ・形の違う個々人の脳を定位脳座標系に変換する。これは線形および非線形変換によりおこなう。その後脳灰白質のデータ抽出を行ったうえで、脳画像をピクセル毎に解析するものである。この方法は、正常者のデータベースを構築しておき、患者の代謝・血流画像をそのデータベースとピクセル毎に統計学的比較を行い臨床診断に応用することを、脳画像解析で始めて可能とした。この手法では、従来のROI評価のような恣意操作が入らず、見落とされていた部位も評価できる大きな利点がある。
- これらの特徴をもった3D-SSPは臨床に応用することにより診断をより容易に行うことができる。このことは読影者の経験によらず、高い精度の診断が可能といえる。通常の視覚判定では困難な血流・代謝の高い部位での低下も統計画像を使うことにより指摘可能で、アルツハイマー病の早期診断が可能となる。また痴呆を呈する各疾患ごと代謝・血流低下パターンを統計画像として表示することにより痴呆を呈する疾患の鑑別診断が容易に行える、など本法の臨床診断への応用は高い有用性をもっている。
各種脳血流画像解析ソフトウェアの概要と臨床応用
国立精神神経センタ-武蔵病院
放射線診療部:松田博史 先生
- 最近、脳機能や形態の画像解析において、形態の異なる各個人の脳機能情報を、Talairachの標準脳に合うように変形することによって脳形態の個人差をなくしたうえで、統計解析を行う手法が多く用いられている。
- 核医学領域ではStatistical Parametric Mapping(SPM),
three-dimensional stereotactic surface projection
(3D-SSP)が主な解析手法であるが、ごく最近、両者の利点を組み合わせたeasy
Z-score Imaging System (eZIS)も開発された。
- これらの手法により、従来の視察よりも優れた精度で脳血流SPECT、FDG-PET、およびMRIの分節化手法を用いて脳局所の萎縮等を解釈することが可能になった。これらの手法は種々の精神・神経疾患に応用され、次々と新しい知見が得られている。
- また、ファントムデータ間の補正により、用いられる正常データベースを各施設で共有化する試みもなされつつある。
- さらに、SPECTやPETの部分容積効果を同時期に撮像したMRIを用いて補正する方法も発表され、複雑な処理を自動化するプログラムも開発された。この部分容積効果の補正により、単位容積あたりの血流や代謝を正確に測定することが可能となり、アルツハイマー型痴呆のより早期での診断等に応用しうる可能性が示唆されている。
- 関心領域の設定においても進歩がみられ、脳形態の標準化を行った上で全脳に自動的にTemplateを置くthree
dimensional stereotactic ROI template
(3DSRT)が開発されたことにより、恣意的でない設定が可能となった。
中国におけるPET検査の現状
中国蘇州大学附属第一医院 核医学科:呉 翼偉 先生
Present Status of FDG Study in
China
- 1995年に初めてPET装置が稼動して以来、FDG検査は中国では飛躍的に進歩して来た。2001年末において、すでに12台のPET装置と50台を超えるFDG-SPECT装置があり、中国国内で広くFDG検査が施行されている。これらの装置は主に北京、上海、広東などの地域を中心として配置されている。
- FDGは基礎及び応用科学の分野だけではなく、臨床診断や臨床研究の分野にも広く使用されてきた。2001年までに、FDGに関する3つの国際学会がChinese
Society of Nuclear
Medicine(CSNM)によって開催された。これらの会議における発表やその他の資料から、年間5000件以上のFDG検査が施行され、ChineseJournal
Nuclear
MedicineでもFDG検査に関する論文が30編以上報告されていることがわかる。PETに関する専門書も最近までに3冊出版されている。
- FDGは現在、6ヶ所のPETセンター及び放射性医薬品会社によって運営された2ヶ所の独立したサイクロトロンから供給されている。
- 中国でFDGによる全身スキャン検査を受けると10,000元(約150,000円)、SPECTでは3,000元(約45,000円)がかかる。この検査料は中国の会社員の月給の約3-10倍にも相当する。中国の健康保険制度は各省によって運営されており、その制度は各都市よって異なる。FDG検査を受けても昨年までは全く払い戻しがなかったが、現在ではいくつかの疾患に対しては、FDG検査の費用の70%を払い戻している都市もある。
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