
今回は金沢都ホテルでの開催です。2001年7月7日(土)15:00〜18:00
司会:福井医科大学 土田龍郎
脳血流:疾患に特有のパターンはあるか
国立精神神経センタ-武蔵病院:松田博史先生
- 脳血流SPECTにおいて、疾患特有のパターンがあると思われるものは、以下のごとくである
- 脳血管障害
- 各、主幹動脈支配領域における血流低下
- 小児において2歳を境とする低酸素性虚血性脳症の障害部位の差異
- 2歳以下では基底核や脳幹部、大脳皮質では中心溝周囲の血流低下
- 2歳以降では大脳の連合野皮質での血流低下
- 痴呆
- アルツハイマー型痴呆ごく初期での後部帯状回〜楔前部、その後の内側側頭部の血流低下
- びまん性レビー小体病における後頭葉の血流低下
- ピック病における前頭・側頭葉の高度血流低下
- 脳血管性痴呆における前頭葉を中心とした非対称性血流低下
- てんかん
- 側頭葉てんかんでの発作間欠期の内側側頭部血流低下と発作時の血流増加
- その他の疾患
- MELASでの後頭葉から頭頂葉の高度血流低下
- パーキンソン病での相対的な基底核と視床の血流増加と痴呆を呈する例での頭頂葉の血流低下
- ヘルペス脳炎における海馬から扁桃、島、帯状回など大脳辺縁系の血流増加
- 一過性全健忘における内側側頭部の血流低下
- 脳死での脳血流全欠損
- うつ病でのうつ期における左側優位の前頭葉血流低下
- これらの血流異常は視察だけで評価しうる場合が多いが、SPMや3D-SSPによる画像統計解析手法が役に立つことが多い。
心臓:血流製剤により治療効果を読む
金沢大バイオトレーサ診療学:滝 淳一 先生
- 再灌流療法における適応決定、その効果判定には負荷心筋血流検査が重要な役割を担っている。
- 正確な読影と適切なレポートは忙しい循環器内科医、外科医にとって必須であり、いくつかの症例を呈示しながら解説したい。
- 特にバイパス手術後の読影には大きな落とし穴が二つある。カンファランス当日の症例をみることにより再確認していただきたい。
- MIBGの最近のトピックについても時間があればふれたい。
司会:金沢医科大学 放射線科 東光太郎
消化器:どこまで読影できるのか
東京医科大学八王子医療センター放射線科:小泉 潔 先生
- 「どこまで読影できるのか」は期待しうる所見を的確にとらえるのに最適な検査法をいかに選択するかにかかっている。消化器核医学検査は多岐にわたっているが時間が限られているので、肝受容体シンチグラフィ、出血シンチグラフィ、異所性胃粘膜シンチグラフィに話を絞る。
- 肝受容体シンチグラフィの読影は連続像およびSPECT像の観察ならびに定量指標の解釈による。肝機能障害の程度は投与5分像の視覚的観察がかなり障害程度を識別できる。定量的にはLU15やHH15が簡便かつ精度の比較的高い指標であるが、それぞれ問題点もある。SPECTにより肝内局所集積分布の異常を観察し、腫瘍性病変の場合はその集積の有無を評価することが大切である。
- 出血シンチグラフィの読影はRIの血管外漏出を観察し、それが腸管内を移動することをシネ表示などを使い的確にとらえることが大切である。本検査の重要な目的の一つは血管造影(IVR)が適応になるのか、その際にはどの血管を攻めるのがよいかを判断することにある。出血シンチグラフィを行わずに血管造影を施行した場合の血管外漏出の描出率はかなり落ちる。
- 異所性胃粘膜(メッケル憩室)シンチグラフィは陽性率のかなり低い検査であり、偽陰性の原因となる胃からのRI流出を抑制する種々の方法が考えられている。偽陽性になる疾患や病態も知っておく必要があり、小腸炎や大腸炎に集積することがある。
腫瘍:腫瘍スキャンのポイント・読み方
京都府立医科大学 放射線科 牛嶋 陽 先生
- 腫瘍核医学でよいレポートを書くには、検査依頼内容をよく検討し適切な放射性医薬品を選択するところから始まる。
- 核医学の大きな特徴である特異的集積を示すことができれば、他の検査をかなり省略することができ患者にとって有益となる。
- GaやTlのような非特異的集積を示す製剤を使用する場合には、単なる異常集積の指摘ではなく、集積の有無について「なぜ」という観点で解釈を加えることが核医学検査の役割を訴える上で重要である.
司会:富山医科薬科大学 放射線科 渡辺直人
腎臓:定量評価上の注意点
札幌鉄道病院:伊藤和夫
先生
- 腎臓核医学は腎・泌尿器領域の形態的および機能的画像診断法として,特に,分腎機能の定量的評価あるいは病態解析法としての特徴を有している.一方,最近の画像診断の進歩に伴い,腎臓核医学検査が腎・泌尿器疾患の形態的画像診断法として利用される機会は極めて限られ,核医学診断装置やデータ処理装置の普及,進歩にも関わらず検査数の減少傾向が観察されている.
- 歴史的な観点では,腎臓核医学には画像診断法と腎機能定量法の2つの流れがある.放射性医薬品の開発に伴い,レノグラムの応用,スキャナーによる腎実質像撮影,ガンマカメラによる血流および動態イメージ,コンピュータ利用によるレノグラム動態解析は画像診断法としての腎臓核医学の進歩に大きく貢献している.さらに,様々な負荷方法が開発され,カプトプリル負荷シンチグラフイは腎血管性高血圧症,利尿剤負荷シンチグラフイは水腎症の鑑別,Tc-99m-DMSASPECTシンチグラフイは腎盂腎炎後の腎瘢痕の診断に広く利用されている.また,臨床的に最も緊急性を有する急性腎不全時の病因,病態解析および予後推定の評価に対して腎動態シンチグラフイは有用な検査として利用されている.
- 一方,総腎機能定量法としてヨーロッパで広く普及しているCr-51-EDTAを用いた採血法に関しては,残念ながらこの20〜30年日本で取り上げられることはなかった.現在日常臨床で施行されている腎機能検査法は,少なくとも核医学的評価法と比較してかなり精度が低い.体外計測法で算出される腎機能定量法も採血法と比較すると精度が低いことが報告されている.腎臓核医学の定量性は採血法の採用により向上することが期待できる.しかし,問題の解決は決して容易ではない.
- 今回の講演で前記した内容を全て紹介することは出来ないが,テーマである「良い核医学レポートを書こうpart2」,サブテーマの「定量評価上の注意」に沿った内容で話をしたいと考えている.レポート内容の多くは画像に対する所見と解釈で占められているように思われるので,急性腎障害の症例を呈示し,出席者の方々にも読影を楽しんで頂けるように配慮したい.定量評価に関しては現在の臨床的腎機能検査法に関して概説し,核医学検査の特徴および現在取り組んでいる日常検査における採血法の応用に関して紹介したい.
技術:アーチファクトの防ぎ方
金沢大学医学部附属病院放射線部 山田正人 技術主任
- 核医学検査において信頼される情報は大切である。しかしながら放射性医薬品の投与から撮像までの流れにおいて様々な原因によるアーチファクトが発生する。
- 検査に携わる関係者にとってはアーチファクトについて熟知していれば未然に防止したり、影響を少なくできる。
- また、撮像後でも画像処理テクニックにより防ぐことも可能である。
- 当院で経験したアーチファクトを中心に数例紹介し、改善策があればその方法についても説明する。
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