Case YW01

左副腎褐色細胞腫

Pheochromocytoma of the left adrenal gland

症例解説と読影のポイント

• 画像をどう読むか
  • CT所見
    • 単純CTでは径4.5×5.5cm大の腫瘤を左副腎部に認める。腫瘤上極部では内部に軽度低吸収域を認める。
    • 造影CTは施行していない。
  • MRI所見
    • 上記腫瘤はT1WIで腎皮質と同程度の低信号、T2WIでは高信号を呈し変性壊死部が散在している。
    • 造影dynamic studyでは動脈相で辺縁部に強い造影効果を示し、１-2分かけて病巣内部へ増強効果が到達している。
  • I-131 MIBG副腎髄質シンチグラフィおよびI-123 MIBG心筋交感神経機能シンチグラフィ
    • 単純CTにて径4.5×5.5cm大の境界明瞭な腫瘤を左副腎部に認めるが、壊死を示唆する低吸収域はごく一部であるにもかかわらず、I-131 MIBGおよびI-123 MIBG(右図）の有意の集積が病変相当部に認められなかった。
• 解説
  • 血液生化学検査結果
    • 末梢血中アドレナリン43 pg/ml(基準値0-80), 末梢血中ノルアドレナリン 31400 pg/ml(基準値90-420), 末梢血中ドパミン122 pg/ml (基準値0-30)。静脈血サンプリングでは左副腎静脈優位にアドレナリン、ノルアドレナリン、ドパミンがいずれも高値を呈している。
  • 臨床的に褐色細胞腫が疑われるにもかかわらずMIBGの限局性集積増加を認めない理由をどう考えるかが問題となった。病巣の大きさはシンチグラフィで十分検出できる大きさであり、病巣内の壊死部分もごくわずかであった。よって、
    • 病変が大きくMIBGが希釈されてしまった、
    • またはシナプス周囲においてnorepinephrineが多量に存在するためにpost-synaptic receptorが飽和しリガンドであるMIBGが結合できないためなどの機序が考えられた。
  • なお、この症例では摘出術が施行され術後は降圧薬を内服することなく血圧は正常化し、血中カテコラミン３分画も正常化した。
  • 術前後でI-123 MIBGの心の描出の程度を比較したところ術前は明らかな心の描出を認めなかったが（術前の心筋脂肪酸代謝イメージングでは特に異常所見なし）、術後血中カテコラミン３分画が正常化してから再検すると心の描出が認められた。したがって、褐色細胞腫の検出においてfalse negativeの症例では著明な高カテコラミン血症を示唆する場合があると思われ注意を要すると考えられた。
• 文献
  • 中條政敬　他；プラスワンの検査法としての核医学　内分泌。臨床画像 13:664-675, 1997.
  • 松本雄賀　他；術前後でI-123 MIBG心筋シンチグラム所見を検討し得た褐色細胞腫の１例。核医学 32: 1023-1028, 1995.　

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Update: Sep 24, 1999