Case UK07
Alagille症候群
Alagille syndrome
症例解説と読影のポイント
- 症例のまとめ
- 女児,5ヶ月
- 主訴:黄疸
- 1) 広い前額、すじの 通った鼻、小顎
- 2) 心雑音
- 3) 黄疸
- 4) 眼科診察で後部胎生輪,色素網膜症
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- 検査所見
- RBC 404, Hb 11.4, Hct 34.4, WBC 10600, Plts 32.8,TP 6.6, T-Bil 5.27, D-Bil 3.74, ZTT 2.6, TTT 6.6, Al-p 1215,AST 299, ALT 371, LDH 380, γGTP 346, ChE 220, CK 132, T-Chol 195, TG 156
- 現病歴:1ヶ月検診では異常なし.しかし,3ヶ月検診で体重増加不良,黄疸を指摘され,経過観察となった.さらに約1ヶ月後,体重増加不良,黄疸が持続するため,近医を受診し,血液検査で胆汁欝滞,肝機能障害を指摘され,当院小児内科へ紹介入院となった.
- 理学所見
- 画像をどう読むか
- 胸腹部XP :心拡大なし、蝶型椎弓の疑い
- 心エコー:末梢生肺動脈狭窄,右室圧ごく軽度上昇,心内シャントなし
- 腹部エコー:異常なし
- 腹部CT(右図):異常なし
- MRCP:異常なし
- 上記所見より,Alagille症候群が疑われ,胆汁欝滞の状況を診るため,肝胆道シンチを依頼された.
- 胆道シンチ 所見(下図)
- 肝への集積は良好であり
- 胆嚢の描画も良好である。
- RIの腸管への排泄は著明に遅延しているが,6時間後に排泄があるため胆道閉鎖症は否定でき,以後の撮影は中止した。
- 肝針生検所見
- 門脈域は、繊維性に拡大し、小葉間胆管の消失、細胆管の増生、軽度のリンパ球浸潤を認め、Chronic intrahepatic cholestasis, consistent with Alagille syndromeと診断された.
- Alagille症候群とは?
- Alagille症候群 (arteriohepatic dysplasia)は...
- Alagille症候群 (arteriohepatic dysplasia)は,フランス人医師Alagille が1975年に報告した稀な常染色体優性遺伝疾患で,発生頻度に男女差はない.分娩約10万回に1例の発生頻度とされている.肝内胆管低形成による慢性の胆汁鬱滞のほか、心、骨、眼、腎などの多彩な病変を合併し、特異な顔貌を呈する。Alagille症候群の典型例では,5徴候[慢性の胆汁鬱滞,特異な顔貌(peculiar face),心雑音(末梢性肺動脈狭窄),椎弓欠損(butterfly appearance),後部胎生輪(Posterior embryotoxon)]を認めるが,不全型もある。その他、成長遅延、腎病変、知能障害などを認めることがある.
- Alagille 症候群の胆道シンチの報告例は...
- Alagille 症候群の胆道シンチの報告例は4例ほどしかない。また,報告者により,いろいろなシンチ所見が報告されている.Aburano Tらは、20歳の女性で、肝の辺縁からのトレーサのクリアランスが、中心部に比して遅延することを報告している(1)。
- またBalich Sらは、生後7.5週の男児で、心プール像消失の遅延、胆嚢描画の遅延、24時間後でも腸管の描画なく、脂肪食を投与してようやく腸管が描画された例を報告している(2).
- Jinguchi Mらは、9歳の女児で、生後16ヶ月では、RI分布は均一で、腸管の描画の遅延を認めたが、9歳では肝内側区の腫大と、この部の集積増加を認めた例を報告している(3).したがって、年齢により、肝の形態、胆汁の排泄状況が変化することが予測される.本疾患の診断に、肝胆道シンチは必須のものではないが、胆汁排泄の状況の把握、経年的変化、胆道閉鎖症の除外などに有用である.
- Aburano T et al: Distinct hepatic retention of Tc-99m IDA in arteriohepatic dysplasia (Alagille syndrome). Clin Nucl Med 14: 874 - 876, 1989
- Balich S et al: Alagille syndrome. New manifestations. Clin Nucl Med 21: 89 - 101, 1996
- Jinguchi M et al: Scintigraphic progress of the liver in a patient with Alagille syndrome (arteriohepatic dysplasia). Ann Nucl Med 17: 693 - 697, 2003
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Update: May 29, 2005