Case UK06
剣道による疲労骨折,およびstress injury
Stress fracture, and stress injury due to kendo (Japanese fencing)
症例解説と読影のポイント
- 画像をどう読むか
- 核医学画像診断所見: RIアンギオ(Fig.1) ,血液プールシンチ (Fig.2) では,左第2中足骨付近の血流の増加を認めた.また骨シンチ(提示),骨SPECTでは右脛骨,左第2中足骨,左舟状骨,左踵骨に異常集積を認め,病歴(下記)から疲労骨折と診断した.また,左手,右膝,左足関節に関節炎様所見が見られ,stress injuryと診断した.
- Fig.1

- Fig.2

- 骨XP: 足関節付近のXPは正常であるが,他の部は撮影してない.
- 下腿,足関節部のMRI: T1Wで右脛骨,左距骨,左踵骨,左舟状骨,左楔骨にlow intensity,T2Wで同部に淡いlow intensity,T2-STIRで同部にhigh intensityを認め,疲労骨折に一致する所見と診断された.なお,左足関節部の軟部腫瘍の所見は認めず.
- 解説
- 依頼伝票に書かれた診断と,上記の骨シンチ所見が大きく異なっているように思われた.そこで,骨スキャン直後に問診してみると,今春高校に入学してから,剣道部で毎日2時間練習していた。1ヶ月前より,左足関節の痛みと腫脹が出現し,某病院を受診し,MRIでゼリー状のもの(Ganglion?)があり,手術が必要で,骨シンチも必要といわれた。中間テストで,部活を休んでいたところ,痛みは消失し,当院来院時は,既に腫脹もなくなっていた.また,よく聞くと左足が痛いときは,右足も痛かったとのこと。
- 整形外科医が疲労骨折を疑った場合は,ほとんど骨シンチは依頼されないのが実状である.この例では,たまたま骨軟骨腫瘍を疑ったため,核医学科へ紹介された。
- 疲労性骨折の核医学診断では,病歴が一番大切である.この例では,高校生で,しかも部活開始後約2ヶ月半後の検査であったことが,最大のヒントであった.さらに問診で,剣道部と判明し,部位が剣道による好発部と一致し,しかも部活を休んで改善したことで,疲労骨折,stress injuryと診断可能であった。
- 中足骨疲労骨折は,ジャンプ,踏込み系のスポーツ(バスケット,バレーボール,陸上,剣道など)に多い.一般的には第2,3中足骨が多く,第5中足骨(ジョーンズ骨折)にも起きる.脛骨,舟状骨,踵骨などにも種々のスポーツで疲労骨折が生じる.疲労骨折の初期では,XPで検出できないが,骨シンチでは検出可能で,もっと利用されてもいいと思う.なお,近年疲労骨折のMRIでの診断の報告も増加している。
- 骨シンチで,骨転移と外傷の紛らわしいときや,疲労骨折を疑うときは,核医学医が直接患者に問診すべきである.本症例は,核医学画像を診断する上で,病歴の重要性を示す好例と考え,症例呈示させていただいた.
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Update: May 31, 2004