Case UK03
ガンマカメラの故障によるartifact
症例解説と読影のポイント
- 画像をどう読むか
- 出題の図は、Tl-201、Tc-99mによるサブトラクション副甲状腺シンチで、2核種同時収集(dual
window)で撮影している。
- Tl-201像(右上)で、甲状腺右葉上極に一部重なるようにして、極めて強い異常集積を認める。Tc-99m(右下)は正常である。
- サブトラクション副甲状腺シンチ(左下)は、右上極の副甲状腺腺腫に一致する画像パターンではある。また、臨床的にも矛盾はないようにも見えた。
- しかし、Tl-201の異常集積があまりにも強すぎ、artifactを疑った。
- そこで、確認のためTc-99m MIBI によるdouble phase
副甲状腺シンチ(前ページ下図)をおこなったが、正常像で、上記所見はartifactと診断した。
- 解説
- 右図に、Tl-201とTc-99mの点線源を用いたガンマカメラの固有均一性を示す。
- Single
windowでのTl-201像(左上)は、中央がやや不均一であるが、ほぼ正常である。またsingle
windowでのTc-99m像(右上)も、ほぼ正常である。
- しかし、dual
windowでのTl-201像(左下)は、中央部に正方形状の異常像(artifact)を認め、明らかに均一性が不良である。ところが、dual
windowでのTc-99m像(右下)は、網目状の軽度異常が認められるが、Tl-201の所見とは大きく異なっている。
- 以上の所見より、副甲状腺シンチでの異常集積は、ガンマカメラの故障による均一性不良によるものと確認できた。また、ガンマカメラの検出器のケーブルを動かすと現象が出たり、出なかったりで、ケーブルを交換すると治ったため、故障箇所は検出器のケーブルの断線によるものと考えられた。
- なぜdual
windowでのTl-201像のみ中央に強いartifactが出たか、またTc-99m像で網目状の異常がでたかについて興味を持ち、東芝さんに説明を求めたが、仕様上2核種同時収集でTcのみ,あるいはTlのみの異常が起こり得るとのことであった。
- 考察
- 本症例は、たまたまartifactが、Tl-201、Tc-99mによるサブトラクション副甲状腺シンチ上、副甲状腺機能亢進症(副甲状腺腫)にきわめて紛らわしい画像所見を呈したため、artifactの診断が難しかった症例である。
- また、2核種同時収集時にしかartifactが発生せず、しかもTl-201の画像にだけartifactが出るという稀な所見を呈した。通常の均一性のチェックは、dual
windowでは行われないため、均一性のdaily quality
controlを行っていても発見が難しかったと考えられる。
- いずれにしろ、核医学診断医は、つねにartifactの可能性を念頭におき、検査、読影にあたるべきである。また放射線技師は、ガンマカメラなどのquality
controlを日頃から心掛けるべきである。
- 本院のガンマカメラ(東芝GCA901A)は購入後12年も経過しており、いろいろ不具合が出てもおかしくはない。また、その後のガンマカメラの改良が進んでいると考えられるが、このような発見の難しいartifactが出うる仕様となっているのは好ましくないと考えている
- この症例提示
が、同型のガンマカメラをお使いの施設の方に何らかの参考になれば幸いである。
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Update: Apr. 22, 2000