Case ST02
May-Thurner
syndrome;
dilatation of superficial vein due to
collateral circulation
症例解説と読影のポイント
- 患者:53歳、男性
- 主訴:左鼠径部腫瘤
- 家族歴、既往歴:特記すべきことなし
- 現病歴:1週間前より左鼠径部の腫瘤を自覚し、当院受診。腹壁にメズサの頭様の静脈拡張を伴う。疼痛および下肢の腫脹は認めなかった。
- 検査所見:明らかな異常所見を認めず。
- 画像をどう読むか
- RI
venographyでは両側深部静脈は通過良好であった。駆血下(図1)、駆血解除下(図2)で骨盤部および左下腹部にむかう異常血管の描出を認めた。
Fig.1
|
Fig.2
|
- CTでは、 RI
venographyで認められた左下腹部に向かう異常血管は左大伏在静脈から分岐して腹壁を走行しており、拡張した下腹壁静脈と考えられた(図3-
A,B,C)。左鼠径部の腫瘤は拡張した下腹壁静脈の一部と考えられた(図3-
C)。
- 右総腸骨および内外腸骨静脈は拡張。左総腸骨静脈は右総腸骨静脈に圧排され、完全に虚脱している(図4−A,B,C,D)。
Fig.4a
|
Fig.4b
|
Fig.4c
|
Fig.4d
|
- 読影のポイント
- RI
venographyによる血流の向きなどの動態情報と、CTによる形態情報の把握により、より正確な診断が可能になると考えられる。
- 解説
- 本例は、右総腸骨動脈による左総腸骨静脈の圧排およびその側副血行路の発達を示した症例で、静脈血栓症を伴わず、May-Thurner症候群と考えられる。
- May-Thurner症候群とは、剖検例において報告された概念で、左総腸骨静脈の隔壁(Spur)形成による狭窄を特徴とし、血栓は伴わず右総腸骨動脈の拍動が原因ではないかと推測されている。
- 一方、類似した概念で、Iliac
compression
syndromeも知られている。これもMay-Thurner同様、右総腸骨動脈による左総腸骨静脈の圧排が原因であるが、血栓を伴う臨床的な概念であるという点でMay-Thurnerとは区別するべきと考えられる。
- 本例は血栓を伴わないsubclinicalな病態であり、May-Thurner症候群とするのがより適切と思われる。
BackCase
Index Nucl
Med Home
Update: Apr 8, 2002