Case SM05
腋窩リンパ節転移(低分化腺癌)、乳癌の疑い
Axillary metastatic lymphnodes showing adenocarcinoma, probbably from breast cancer
症例解説と読影のポイント
- 画像をどう読むか
- 症例
- 46歳女性
- 主訴:両側下肢筋痙攣と硬直、尖足位
- 現病歴:20xx年6月24日から歩行時に両側下肢のつっぱり感、疼痛が出現。症状は徐々に悪化し、4日後には両側下肢が硬直し、歩けなくなったため、当院神経内科入院となった。
- 入院後経過:頭部および脊椎MRでは、明らかな異常所見は指摘できず、入院中に症状は増悪し、下腿に触れただけでも、両下肢の筋硬直と強い痛みが生じるようになった。また、下肢の尖足位が持続するようになった。
- 生化学検査、腫瘍マーカー、免疫学的検査:抗amphiphysin抗体以外には、異常なし。
- 抗amphiphysin抗体: 61440倍(8月2日)、30720倍(9月7日)
- 病理診断:Metastatic carcinoma in the lymph node(原発として乳癌を最も疑う)
- 臨床経過
- 抗amphiphysin抗体陽性及び病理診断の結果から、原発巣として左乳癌を疑い、左乳房の検査(超音波、マンモグラフィ、MR)を行ったが、FDG-PET同様検出することができなかった。
- 抗amphiphysin抗体は15360倍まで低下したが(10月25日)、依然として高値を示している。結局、原発巣は確定できず、乳癌を想定した化学療法、ステロイド療法を行い、症状の軽度改善が得られている。
- 解説
- stiff-person 症候群
- 概念:成人に発症する持続性の全身性筋硬直と発作性有痛性筋痙攣を主症状とする疾患。
- 病態生理:GABA作働性ニューロンの障害によって、GABA系の神経活動が低下し、α運動ニューロンの興奮性が高まり、多シナプス性の外受容体反射の亢進が生じるためと想定されている。
- 症状:発作性有痛性筋痙攣、筋硬直、自律神経症状、持続性筋放電
- 合併腫瘍と抗神経抗体(認識抗原):
- 大腸癌、肺癌、Hodgkinリンパ腫 -> 抗GAD、抗gephyrin
- 乳癌 -> 抗amphiphysin
- 病因
- 1)自己免疫的機序によるもの
- 抗gultatic acid decarboxylase (GAD) 抗体陽性(60%)。
- GADはL-グルタミン酸からGABAの生成に働く酵素。 GADの機能が阻害され、GABA作働性ニューロンが障害される。
- その他、抗ラ島細胞抗体、抗胃壁抗体、抗甲状腺マイクロソーム抗体、抗ミトコンドリア抗体、抗核抗体などの自己抗体を同時に持つ例が多い。
- 2)悪性腫瘍との関わりを持つもの
- 乳癌、肺癌、大腸癌、Hodgkinリンパ腫、咽頭癌、胸腺腫などの合併が知られており、傍腫瘍性神経症候群の一つとされている。
- 乳癌合併例では、シナプス小胞関連蛋白で、エンドダイトーシスに関わるamphiphysin分子に対する抗体が検出されている。
- 本症候群で、抗amphiphysin抗体が検出された場合には、潜在性乳癌を疑う腫瘍マーカーとして重要である。
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Update: Jan 6, 2006