OK01 lecture: cardioBull version 4
心筋血流解析ソフトウェアcardioBull(ver.4)の定量解析技術
- 金沢大学大学院 医学系研究科 バイオトレーサ診療学 奥田光一
Quantification techniques of cardioBull version 4.
要旨
心筋SPECTは容易に機能画像を作ることができる優れた手法であり,得られたデジタルデータの機能画像は定量化に適しているため,コンピュータ支援診断に応用することが可能である.心筋血流の定量評価を目的に開発されたcardioBullの定量解析技術を概説し,他のソフトウェアとのスコアリング比較,そして,臨床応用として薬剤負荷と運動負荷における心筋血流マップへの影響について紹介する.
cardioBull バージョン 4について
- cardioBullは富士フイルムRIファーマ(株)と共同研究・開発を行っている心筋血流解析ソフトウェアである.cardioBullはこれまで3度のバージョンアップを経て,より定量性の高い心筋血流解析を目指してきた.
- まず,再現性良くPolar mapへ変換するために,心筋の関心領域の設定を自動化し,さらに,心尖領域の走査方法をこれまでの短軸に対して輪切りにする方法から放射状にサーチするアルゴリズムに変更した.また,負荷,そして,安静試験といった対となるデータの位置あわせについては,AIR(Automated Image Registration)を使用し,精度良く位置あわせを行うことが可能となった.今回のバージョン4における改良点を以下に示す.
- 日本核医学会より公開されている日本人の心筋標準データーベースを搭載[1,2].
- スコアリングアルゴリズムの改良.
- 心筋SPECTレポートとして,検査結果を出力可能.
- レポートシステムとの連動機能の追加(オプション機能).
代表的な心筋血流解析ソフトウェアとの比較
- cardioBullと代表的な血流解析ソフトウェアである,Quantitative perfusion SPECT(QPS,Cedars-Sinai Medical Center,Los Anglels,CA,USA),4D-MSPECT(University of Michigan Medical Center,Ann Abor,MI,USA),the Emory Cardiac Toolbox(ECTb,Syntermed, Inc.,Atlanta,GA,USA)を用いて,スコアリング方法の比較を行った.心尖の血流が欠損を示す症例を対象として,それぞれのソフトウェアにて解析を行い,負荷時のスコアを算出した.
- Polar map表示では,すべてのソフトウェアにて同等の表示結果となっているが,cardioBullとQPSは画素間の値を補完しているため,継ぎ目のない明瞭な血流分布を表現している.
- 負荷時のスコアの合計は,cardioBull,QPS,4D-MSPECT,ECTbにおいてそれぞれ,25,26,20,12となった.
- cardioBullのPolar map表示およびスコアリング結果は,QPS,4D-MSPECTと同様の傾向を示している.

Fig. 1 スコアリング比較結果 |
cardioBullを使用した臨床応用例 -薬剤負荷と運動負荷の比較検討-
- 心筋血流検査における負荷方法の違いが正常血流症例に与える影響を検証するため,薬剤負荷および運動負荷によるデーターベースを作成した.
- 運動負荷は女性23例,男性19例,薬剤負荷は女性21例,男性22例よりデーターベースの作成を行った.薬剤負荷はすべてアデノシンを使用した.
- 収集条件については,カメラはE.CAM(東芝メディカルシステムズ社製),コリメーターはLEHR,LMEGP,カメラの軌道は非円軌道にて360度収集を行った.
- Polar mapにてカウント分布を確認すると,前側壁にピークが存在する360度収集の集積パターンと一致していた.薬剤負荷においては,運動負荷と比べカウントのピーク面積が若干大きく,前側壁から前壁にてピークを確認することが出来る.
- 17セグメントモデルにおける,各セグメントのカウント値を比較すると,統計的な有意差が認められたセグメントは,男性の前壁のみとなった(基部領域は統計的有意差が生じやすい傾向にあるため,今回の検討からは除外し,中央部から心尖の評価とした.)
- 女性においては,負荷方法の違いによる差が認められなかった.
- 今回の検討においては,視覚的評価では,負荷の差が若干確認されたが,セグメント分けされた血流カウントでは,ほぼすべての領域において有意差が認められなかった.

Fig. 2 運動負荷と薬剤負荷の比較結果 |
まとめ
- cardioBullの定量解析技術は,再現性の高い心筋の自動認識機能や,負荷および安静時データの自動位置合わせ,血流分布が明瞭に表示されるPolar mapへの変換,さらに,代表的な心筋解析ソフトウェアと同等の結果を出力することができるスコアリング機能,より成り立っている.
- cardioBullの特長として,デスクトップPCやラップトップPCにソフトウェアのインストールが可能であるため,データ処理装置からDICOM出力し,データを移動させることで,簡便に臨床研究を行うことが可能である(負荷方法の比較検討研究もこの手法にて行った).さらに,多施設共同研究では,バージョンを統一したcardioBullで検証することで,ソフトウェアの差を除外した結果を得ることが可能である.
参考文献
- Nakajima K, Kumita S, Ishida Y, Momose M, Hashimoto J, Morita K, et al. Creation and characterization of Japanese standards for myocardial perfusion SPECT: Database from Japanese Society of Nuclear Medicine working group activity. Ann Nucl Med 2007; 21:505-511
- Nakajima K, Okuda K, Kawano M, Matsuo S, Slomka P, Germano G, et al. The importance of population-specific normal database for quantification of myocardial ischemia: comparison between Japanese 360 and 180-degree databases and a US database. J Nucl Cardiol. 2009; 16: 422-30.
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Update: Jun23, 2009