Case MS02: 症例報告
SPECTとCTとの融合画像による虚血性心疾患の診断
Fusion Image Diagnosis in Ischemic Heart Disease
Shinro Matsuo
要旨
虚血性心疾患の画像診断には従来から心臓核医学検査による冠血流予備能や左室機能検査が行われてきたが、multidetector-row CT(MDCT)による形態診断が進歩してきた。これまでの心臓核医学検査を補う形でMDCTを用いることで心臓核医学検査による虚血診断のレベルを上げることができるかもしれない。当院においてSPECT/CTの融合画像により虚血性心疾患の診断を行った症例を呈示する。
症例
- 78歳、男性。
- 15年前に心筋梗塞発症しPCI施行歴あり。近医にて高血圧の治療を受けており、心筋虚血精査のために運動負荷MIBI心筋シンチグラフィ施行となった。
Fig. 1 運動負荷心筋シンチグラフィのSPECT像 |
Fig. 2 QGS解析結果 |
Fig. 3 心筋SPECTとMDCTとの融合画像.CTでは第一対角枝近位部に狭窄が存在した。
融合画像では責任冠動脈病変は第一対角枝分岐後の前下行枝側の枝であることがわかる。 |
考察と解説
- 本症例は前壁から側壁に心筋灌流異常を認めることは図1で容易に観察できる。しかし、この灌流異常の責任冠動脈(culprit lesion)を正確に診断することは容易ではない。
- 対角枝が原因であるかという場合でも、第一対角枝か第二対角枝なのかという疑問が残る。また、high lateral branchやOMといった枝が原因での虚血の関与についても考えられる[1-4]。
- 本症例では第一対角枝が大きく、この枝の分枝が完全閉塞し心筋梗塞を生じていることが融合画像によって明らかになった。
- MDCTの画像とSPECT画像を横に並べて頭の中で融合することができる経験のある心臓核医学専門医が少なくない。しかし、融合画像で提示することで一般内科医や循環器医に対して治療選択に必要な重要な情報をわかりやすく提供することが可能となった。
- 現在日本で使用できる融合画像ではいくつかの選択肢がある。市販されたソフトウエアには(CTで作成された冠動脈と心筋の表面に、心筋SPECTのカウントを乗せる) CardIQ Fusion(カードアイキュー・フュージョン) 、「ZIOSTATION」,「CT-SPECT 3D Fusion」、といったものがある。また、エモリー大学からHeart Fusionというソフトウエアが出ている。
- CTでの心臓の上にSPECTのカウントを乗せるものが良いかどうかは確立していない。核医学専門医になじみの深いQPSの画像にCTの血管像をのせる方法を当院では使用した。
- Cedars-Sinai’s software (CT fusion);QPS 2008 versionで融合画像を作成したものである。この方法は ソフトウエアフーションの中ではオリジナリティが高く、操作は簡単である。
- ヒトの冠動脈は比較的個人差が大きく、SPECTでの画像と冠動脈の支配領域が一致していない集積が見られることがある[3]。融合画像を作成することにより、血管支配領域に一致する集積低下なのか、あるいはアーチファクトの可能性が高いのか、他の心疾患が原因なのかといったことの鑑別に利用できるであろう[4]。
結語
- GE社製MDCTと東芝/Siemens製SPECTの融合画像作成が可能である。
- 心臓血流シンチグラフィと64列MDCTを融合させることにより責任冠動脈の診断精度の向上が期待できる。
参考文献
- Matsuo S, Nakajima K, Akhter N, Wakabayashi H, Taki J, Okuda K,et al. Clinical Usefulness of Novel Cardiac MDCT/SPECT Fusion Image. Ann Nucl Med 2009 (in press).
- Matsuo S, Nakamura Y, Matsumoto T, Nakae I, Nagatani H, et al. Visual assessment of coronary artery stenosis with electrocardiographically-gated multislice computed tomography. Int J Cardiovasc Imaging 2004;20:61-66.
- 松尾信郎 マルチスライスCTによる心臓イメージングの現状 放射線技術学会誌 2005;61:1309-1317.
- Matsuo S, Nakajima K, Wakabayashi H, Okuda K, Akhter N, Taki J,et al. Clinical usefulness of novel fusion imaging system by using 64-section MDCT and cardiac SPECT. J Nucl Med 2009; 50(suppl. 2), 155.
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Update: Jun23, 2009