Case KT04
成人 スティル病疑い
s/o Adult Still's disease
症例解説と読影のポイント
- 画像をどう読むか
- 67Gaスキャン: 著明な肝脾腫と骨髄への集積亢進が認められる。
- 骨スキャン: 若年者であるという条件を考えると関節への集積亢進はある程度割り引いて読影する必要があるが、上下肢関節及び右第3,4指関節に軽度集積亢進が認められる。
- 胸部CT: 胸水および心嚢水が認められる。
- 解説
- 咽頭痛及び39℃を超える発熱で入院し、原因不明のまま90日に及ぶ弛張熱が持続した症例である。細菌感染を疑い、初期にセフェム系、ベータラクタマーゼ阻害剤を中心とした抗生剤治療が行なわれたが効果無く、また胸水及び心嚢水が認められたことから、結核性の胸膜炎/心膜炎を疑って8日間の抗結核薬+ステロイドの治療が続いて行なわれた。しかし、胸水、喀痰、胃液、尿、血液所見から結核が否定され、最終的には、カルバペネム系抗生剤とミノマイイシンの併用に切り替えられ、その後徐々に弛張熱が消褪した。また、入院期間中には初期に心不全、中期にDIC及び高度貧血がみられた。
- 本症例では、入院中期に行なわれたGaスキャンでは明らかな炎症のfocusは認められず、肝脾腫と骨髄への集積亢進が認められるのみであった。入院後期に行なわれた骨スキャンでは、入院時から持続する上下肢関節痛と入院時中期から現れた右第3,4指関節痛に一致する集積亢進がみられた。数種類の抗生剤が常時投与されていたことから血液培養は実施されず、また、ウイルス、リッケチアその他の感染源も検査されたが、特定できるものは得られなかった。熱発時に体幹部に一過性の紅疹がみられ、皮膚科受診で成人スチル病疑いと診断された。本症例では、成人スチル病の大項目/小項目の診断基準を満たしていたが、最終的に抗生剤によって発熱の消褪、白血球、CRPの正常化がみられたことから、成人スチル病診断の除外基準である感染症の除外ができなかった。成人スチル病では、さまざまの合併症(胸膜炎、心膜炎、心不全、DIC、急性心筋炎、間質性肺炎、急性呼吸促迫症候群、急性肝不全、血栓性血小板減少症、血球貪食症候群、シェーグレン症候群、亜急性壊死性リンパ節炎、神経障害)が知られており、本症例でも胸膜炎、心膜炎、心不全、DICの合併がみられた。
- 膠原病や成人スチル病などの類縁疾患におけるGaの骨髄集積は、これまでにも報告されており、不明熱でGaの骨髄集積がみられた場合には、成人スチル病は鑑別すべき疾患の一つである。佐賀医科大の報告例では、成人スチル病のGaスキャンにおける骨髄集積陽性例は3/8(37.5 %)であり、high sensitivityとはいえないが参考とすべき所見であろう。また、治療抵抗例に陽性例が多く、発熱、関節症状の増悪に一致して骨髄集積が増加したとも報告されている。
- Gaの集積機序は不明な部分が多いが、骨髄集積の機序としては二つあげられている。一つは、貧血との関連であり、血清鉄の欠乏状態で鉄に結合していないトランスフェリンが増加し、Gaの集積が増強するというものである。もう一つは、成人スチル病ではTh1細胞、マクロファージの活性化がみれ、それに伴って産生される種々のサイトカインが増加し、マクロファージその他の細胞においてトランスフェリンレセプターの発現が増強されるというものである。本症例では、Gaスキャン時に高度の貧血がみられており、貧血の影響が強いと思われる。しかし、他のGaの骨髄集積を認めた成人スチル病で貧血が高度でない例もあり、また健常者と比べIL-6, INF-γ, TNF-αが有意に増加しているという報告もあるので二つ目の機序も否定できない。
- 文献
- Kanegae F et al Bone marrow accumulation in gallium scintigraphy in patients with Adult Still's disease. Ryumachi 2002; 42: 872-878
- Hoshino T et al Elevated serum IL-6, IFN-γ and TNF-α levels in patients with adult Still's disease. J Rheumatol 1998; 25: 396-398
- Yamaguchi M et al Preliminary criteria for classification of adult Still's disease. J Rheumatol 1992; 19: 424-430
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Update: May 24, 2004