Case KS10
全胞状奇胎
Total hydatidiform mole
症例解説と読影のポイント
- 症例
- 症例:50歳代女性
- 主訴:月経が止まらない
- 既往歴:子宮筋腫(49歳、無治療)
- 現病歴:月経が3週間続いているため近医受診。USにて大きな子宮内腫瘤を認めたため当 院婦人科へ紹介。1年前の人間ドックの骨盤MRIでは異常なし。
- 検査
- CA125 58(増加)
- SCC 0.8
- スメア 腟部/内膜=class II/class I
- 画像をどう読むか
- 超音波
- 子宮内に10cm大の腫瘤が認められる。
- 腫瘤内部には小嚢胞パターンが認められる。
- 図は経腟エコー
- MRI
- T2WIで強い高信号を呈する含水量の多い子宮粘膜下の腫瘍。
- 内部に造影される箇所あり。
- Junctional zoneが一部不明瞭化。
- Endometrial stromal sarcomaや平滑筋肉腫を疑う。
- FDG-PET
- 子宮腫瘤全体にSUVmax=4〜5前後の淡く不均一な集積を認め、遅延相(右図)でもほとんど変化なし。
- 腫瘤の左側辺縁部で局所的に早期相でSUVmax=6.7、遅延相でSUVmax=9.1と高集積が認められる。
- 子宮肉腫で説明はできるが変性筋腫等との区別は難しく、断定的なことはいえない。
- 臨床経過
- 子宮肉腫を疑い、腹式子宮全摘術+両側付属器切除術施行。
- 子宮内部には嚢胞状に腫大した絨毛組織がみられており全胞状奇胎であった。
- 手術当日の尿中hCG-CTPは560,000と著しい高値であった。
-
- 解説
- 胞状奇胎は胎盤絨毛が嚢胞化したもので、嚢胞化の程度と筋層浸潤の有無によって全奇胎、部分奇胎および侵入奇胎、非侵入奇胎に分類される。
- 全妊娠の0.2%(東洋人に多い)
- 受精卵の染色体異常による。
- 雄核発生
- 2精子受精
- 絨毛癌の発生母地となる。
- 臨床所見:妊娠兆候、断続性の不正子宮出血、尿中hCGが著しく高値
- 治療:子宮内容除去/子宮全摘
- 画像診断上は超音波の小嚢胞パターンが特徴的である。本症例でも腫瘤の一部に小嚢胞パターンがみられている。
- FDG-PETに関する報告はみあたらない。本症例では腫瘤全体の集積は低かったが、一部に高集積を呈する部分があった。子宮肉腫のFDG集積はさまざま(自験例ではSUVmax=3〜25)であるため、集積度での鑑別は難しいと考えられる。
- 教訓
- 女性をみたら妊娠を疑え。
- 先入観を持つということは、英知への扉に鍵をかけてしまうようなものである。(メリー・ブラウン)
- 文献
- 長田久夫、胞状奇胎;産科と婦人科, 72(11) : 1422-1427, 2005
- 井箆一彦他、胞状奇胎;産婦人科治療, 84 : 750-753, 2002
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Update: Sep 16, 2008