Case KS09
脈絡膜の悪性黒色腫
Malignant melanoma of the choroid
症例解説と読影のポイント
- 病歴
- 症例:60歳台男性
- 主訴:左視力障害
- 既往歴:糖尿病、アルコール性肝硬変
- 現病歴
- 上記にて加療中。糖尿病性網膜症の確認のための眼底検査で左眼底後極部に腫瘤性病変を指摘される。
- 経過をみていたところ、腫瘤の増大が認められたため精査となった。
- 画像をどう読むか
- FDG-PET
- 腫瘍病変の存在を示唆するような所見はみられない。糖尿病のため脳の集積が低下している(検査時血糖値215mg/dl)。
- 右図
- 某核種(I-123 IMP)
- 脳と肺、肝に明瞭な集積があり、甲状腺集積もあることからI-123 IMPであることがわかる。
- 3時間像では異常はないが24時間像で左眼窩付近に点状高集積を認める。
- 脳血流製剤であるI-123 IMPは悪性黒色腫、悪性リンパ腫によく集積することが知られており、本症例もそのどちらかの疾患を疑ってI-123 IMPシンチグラフィが施行されたのではないかと容易に推測できるであろう。
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- MRIとIMP
- 左眼球内後方部に8mm大のT1WI高信号、T2WI低信号で造影効果のある腫瘤を認める。信号パターンはメラニンに特徴的であり、悪性黒色腫と考えられる。
- I-123 IMPの断層像では眼球内腫瘍に高集積がみられ、やはり悪性黒色腫であることを裏付ける。
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- 臨床経過
- 病理学的確診を得ることが難しい部位の病変であったが、臨床所見、画像診断より悪性黒色腫であることは確実であった。
- 患者本人の希望で重粒子線治療が選択された。
- 解説
- 成人の眼球内悪性腫瘍の代表が悪性黒色腫である。
- 鑑別すべき疾患は転移性腫瘍(肺癌、乳癌、悪性リンパ腫)であるが、悪性黒色腫の特徴的な色調、MRI所見などから診断は容易である。
- I-123 IMPはメラニン前駆物質と化学構造が似ていることからメラニン合成のいずれかの段階で取り込まれると考えられている。メラニンを多く産生する悪性黒色腫により強く集積する傾向がみられるが、メラニンを産生しないいわゆるamelanotic melanoma にも集積することが報告されている。
- I-123 IMPの病変検出感度についてはメタ解析によれば悪性黒色腫全体ではFDG-PETには及ばないと考えられるが、脈絡膜悪性黒色腫に限ればFDG-PETよりも優れるとの知見が得られている。
- 今回FDG-PET で病変の検出ができていないことについては糖尿病の影響も否定はできないものの、通常でも検出が難しい小さな病変であることから、あらためてI-123 IMPの有用性が示された症例といえよう。
- I-123 IMPを用いた悪性黒色腫の診断は保険適応外であるが、その腫瘍選択性は非常に高く、少なくとも従来のガリウムシンチグラフィより有用であると思われる。
- 文献
- 里見久恵他、 IMPシンチグラフィを用いた悪性黒色腫の検出−Gaシンチグラフィとの比較検討− 日皮会誌111,13-19,2001
- 小竹文雄他、 123I-IMPシンチグラフィが診断に有用であった脈絡膜悪性黒色腫の一例 核医学35, 427-433,1998
- 佐藤始広他、 悪性黒色腫における123I-IMPシンチグラフィの臨床的有用性 臨放36, 913-918,1991
- Cohen MB, Detection of malignant melanoma with iodine-123 iodoamphetamine. J Nucl Med 29, 1200-1206, 1988
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Update: Sep 22, 2006