Case IT01
Kr-81mによる肺換気シンチグラフィにおいて生じたアーチファクト
症例解説とアーチファクトの成因
- 検査の経緯
- 今回Krガスによる肺換気スキャン検査を実施した患者は、40歳台女性で肺塞栓症疑であった。肺血流スキャンで軽度の肺塞栓を指摘され、換気、血流のミスマッチ確認のため、換気スキャンが依頼された。従来肺換気スキャンはTc-99mガスで実施しているが、患者の状態が良くなかったので、Kr-81mガスによる換気スキャンを実施した。
- Krガスによる換気スキャンを開始したところ、徐々に収集カウントが減少し始めた。ジェネレータの接続、酸素流量、患者呼吸状態を確認したが異常は無かった。検査終了後収集データを確認した。
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肺血流SPECT |
肺換気収集データ(60s/F) |
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- 上記、右図を見ると、
- 開始後3〜4分で、収集カウントはかなり減少している。
- 右肺全体についてROIを取りカウントをみると、開始直後はトータルカウント82070、平均38.8であった。検査終了直前では、トータルカウント4082、平均7.4となった。
- 約5%である。
- フィルターを変更し、OSEMを使用して処理したが思わしくなかった。
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- 使用説明書と原因の可能性
- そこでKrジェネレータの添付文書を確認したところ、加湿した酸素又は使用するよう表記されていた。

- 当院ではこの検査実施以前に感染予防のため、酸素吸入の際、加湿器に水を使用しなくなった。
- 実験
- 従来との違いはこの点であると考え、簡易実験を実施し加湿器内の水の有無による、抽出効率の違いを確認した。
- 実験の外観
- SPECTを回す時間がなかったので、2sec/Fのダイナミック収集を行った。
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加湿なし |
加湿あり |
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- ROIを取り各フレームのトータルカウントを求めた。
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トータルカウント(平均値) |
割合 |
加湿なし |
5611.3 |
約5% |
加湿あり |
111261.0 |
100% |
- 加湿して患者にて実施した。
加湿あり |
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- まとめ
- 当院では、感染予防のためこの検査が行われる前に、加湿器に水を使用しなくなった。
- 従来Kr-99mガス換気スキャン実施時、酸素吸入器を使用していたが、その使用方法が変更されても、頻繁に行われる検査ではないため、その重要性に気づかなかった。
- 規定どおり加湿を行うことにより、良好な検査が施行できた。
Kr-81mガス抽出能減少時確認事項
- 加湿は必須
- 酸素或いは空気の流量:0.3〜3L/min
- 生理食塩水の使用は厳禁
本症例の解説は、「核医学画像診断誌」に掲載されます。
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