Case AY02
木村氏病(軟部好酸球性肉芽腫症)
Kimura's disease
症例解説と読影のポイント
- 画像をどう読むか
- MRI
- T1で筋肉と同程度の低信号
- T2で脂肪と同程度からやや高信号、造影効果は比較的良好
- FDG-PET
- 低集積(Max SUV早期2.68→後期2.38)
- 臨床経過
- 現病歴
- 十数年前より右頬部〜耳下腺部にかけてしこりを自覚していたが放置。徐々に増大してきた。
- 切除生検の結果「木村氏病」と診断される。その後もステロイド内服にて経過を見ていたが状態は変わらず、放射線治療をすすめられた。
- 身体所見および検査所見
- 右頬部腫瘤、右頚部リンパ節触知
- 血液・生化学的検査にて特記すべき異常なし
- 経過
- 解説
- 木村病(軟部好酸球性肉芽腫症)は1948年に木村らにより「リンパ組織増生を伴う異常肉芽」と報告された。
- 原因は特定されていないが、I型アレルギー関与が強く示唆されている。
- 若年者に多く60%以上が30歳未満に好発する。男女比は約6:1で男性に多い。
- 肉芽腫は全身に発生するが、好発部位は頭頚部であり、全症例数の約75%を占める。 特に耳下腺や耳介周囲(頬部、顎下腺)に多く見られる。
- 本疾患に特有の画像所見はないが、これまでの報告では以下のとおりである。
- MRIではT1強調像にて筋肉と同程度の低信号、T2強調像にて脂肪と同程度からやや高信号、造影効果は比較的良好とされている。
- 67Gaの症例報告では高集積の場合と集積しない場合があり活動性を反映しているのではないかといわれている。
- FDG-PETの報告では低集積であったとされている。
- 全症例の約75%に片側または両側の頚部リンパ節腫脹を合併するため、CTやMRでは悪性リンパ腫との鑑別が困難となることがある。
- 病理組織学的には非特異的な炎症性肉芽の中にリンパ濾胞の増生を認め、リンパ濾胞間には線維化があり好酸球、リンパ球、形質細胞などの炎症性細胞が浸潤しているというのが特徴である。
- 確立された治療法はなく、手術、薬物療法(主にステロイド)、放射線治療がそれぞれ単独もしくは併用されており、単独での治療成績が良いのは放射線治療である。
- 結論
- 木村氏病のFDG−PETを経験した。
- 木村氏病は画像上悪性リンパ腫との鑑別が問題となるが今回のFDG−PET検査ではFDG集積は軽度であった。
- このことから木村氏病が疑われる症例ではFDG−PET検査が悪性リンパ腫との鑑別に有用ではないかと示唆された。
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Update: Dec 13, 2006