Diagnosis of the Cases
症例解説と読影のポイント
SH03:
MELAS
(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and
stroke-like episodes)
- 画像所見:画像の表示が向かって右が右側となっています(通常と逆)
- MRI:左後頭葉の皮質肥厚
- IMP-SPECT:MRIで異常の認められた左後頭葉では外側部(後頭側頭部あたり)の血流は軽度低下しているが、内側部(視覚皮質あたり)の血流はほぼ正常で、右後頭葉の内側部の血流がむしろ低下している。
- Teaching
point:右後頭葉の血流低下は明らかで、たとえMRIで異常が認められなくても同部位に病変が存在すると考えられる。実際4か月前の初診時のMRIで右後頭葉に範囲はSPECTより狭いがT2で高信号の病変がretrospectiveに認められた。左後頭葉の病変と合わせ、小児の多発性の梗塞様病変ということでMELASが疑われる。遺伝子診断にてミトコンドリアDNAのmutation
(MELAS 3243 A→G
mutation)が確認された。MELASでは脳血流SPECTで発作時には高血流、その後血流低下がみられるが、本症例ではSPECTが施行されたのが発作8日後であったので高血流が捉えられなかったものと考えられる。発作約7週後のSPECTでは左後頭葉は後半に血流が低下していた。
- 鑑別診断
- 限局性脳炎(ヘルペスやRasmussen脳炎)
- てんかんによる二次性の皮質肥厚
- 血管炎(による梗塞)
TS01:
多発性骨髄腫患者での腫瘍内A-Vシャントによる高心拍出性心不全
- 画像所見:左大腿動脈より99mTc-MAA動注後のイメージで、骨盤・左大腿骨の骨髄腫病巣の描出と、腫瘍部のA-Vシャントによる肺の描出を認める。
- Teaching
point:右心不全症状を主訴に来院した患者は、入院後、血液検査および骨髄生検から多発性骨髄腫であることが判明した。心エコー、心プールシンチグラフィからは、左心機能は正常であった。多発性骨髄腫の、腫瘍内A-Vシャントによる高心拍出性心不全であることを疑い、体表から左大腿動脈を穿刺し99mTc-MAAを動注することにより、腫瘍部でのA-Vシャントの存在を確認した。右心カテーテル検査によるcardiac
output値は11.0 liters/min, cardiac index は6.1
liters/min/m2であった。
- 文献:Inanir S, Haznedar
R, Atavci S, et al. Arteriovenous shunting in patients with
multiple myeloma and high-output failure. J Nucl Med 1988;
39-1-3
KS02:
肺癌または胃癌からの心筋転移
- 診断:右肺腺癌,噴門部胃癌(double
cancer),心筋、骨、肝転移,顎下部腫瘍(詳細不明)
- 画像所見:
- UCG: 左心室内に中隔に付着するflap様の構造物あり。
経過観察中に急速に腫大してくる
US98/01/19
98/02/09
- MRI: 前壁中隔にGdによる造影効果あり
- 肺MIBI SPECT:心筋前壁中隔にMIBIの集積欠損を認める。
右肺底部に軽度の異常集積あり。

- 肺CT: 右肺S9-10にmass shadow。pericardial
effusion(+)
- Gastrofiberscope: 噴門部胃癌Borr.3
- Coronary Angiography: 異常なし
- ECG: V1-4, abnormal Q, ST上昇
- Teaching Point:
胃癌、肺癌のdouble cancer+心筋転移の症例です。
この症例では特に急性心筋梗塞様のECG所見がみられたことが最も興味をひかれるところです。MIBI,
CAG, MRI,
ECGなどからはspasmによる前壁中隔の急性心筋梗塞が疑われましたがUS
followにて心筋転移が強く示唆され、またST上昇が持続したことから、やはり心電図異常は心筋転移によるものと考えられました。
このような症例はわずかな報告があるのみで非常に稀な症例だといえます。necropsyの結果、心筋へのadenocarcinoma浸潤が証明されましたが,胃癌の転移か肺癌の転移かは区別できませんでした(頻度的には肺癌のほうが心転移しやすいが・・・)。
なお顎下部の腫瘤についてはCT,US施行した後は何もせず、全く不明です。文献的にも悪性腫瘍の心筋転移はTl-201で欠損になり、心筋転移部にはGa-67が持続的な異常集積を呈すると報告されています。
- 参考文献
- 三笠桂一、その他 : 肺癌、25: 93, 1985
- 渡邊好明、その他: 日胸疾会誌 31(5),619, 1993
- Tamura A,et al: Cancer, 70(2), 437, 1992
WS01:
脳実質外海綿状血管腫
- 画像所見:Tl-SPECTのearly
imageで右側頭葉からトルコ鞍にかけてリング状の強い集積が認められた。delayed
imageでほどんどwashoutされ、わずかに集積が残るのみであった。
- Teaching
point:CT、MRI、また血管撮影の脳実質外海綿状血管腫所見は髄膜腫の所見と酷似しており、画像上での両者の鑑別は困難である。一般的に、髄膜腫ではTl-SPECTのearly
scan上均一な強い集積を認め、delayed
scan上集積が減少傾向を示すことが多い。本例ではTlのretention
indexは-71%と著明に低値で、髄膜腫よりもさらにwashoutされた。このTl集積度の変化は海綿状血管腫の特徴である可能性があり、髄膜腫との鑑別に役立つかもしれない。
- 文献:1.Momoshima S, Shiga
H, Yuasa Y, et al. MR findings in extracerebral cavernous angiomas
of the middle cranial fossa:report of two cases and review of the
literature. Am J Neuroradiol 12:756-760 ,1991
KM02:
大動脈炎症候群による肺動脈閉塞(およびそれに伴う大動脈分枝-肺動脈側副血行路の発達)
- 画像所見
- RN angiogram:
左肺は動脈相で血流欠損,大動脈相移行で血流増加
- 肺血流Tc-99mMAA: 左肺の広範な血流欠損
- Teaching
point: [Note!]
これらより肺動脈閉塞の原因が急性閉塞ではないために大循環から側副路の発達を来たしていることを読みとることができる。
血管造影では肺動脈がはっきり描画されず,大動脈分枝-肺静脈瘻なのか,大動脈分枝-肺動脈側副血行路なのかはっきりしなかった。
そこでさらに上行大動動脈に先端をおいたカテーテルからTc-99m
MAAを注入したところ,大動脈系から肺のイメージを得たため,大動脈分枝-肺動脈側副血行路発達であることが証明された。
本症例は大動脈炎症候群の診断で,喀血に対して気管支動脈塞栓術が施行できるかどうかを判断するために一連の検査を施行した。
YK01:
化学療法剤の腹腔内拡散不良
MY02: 解説は当日
図は左上、右上がそれぞれ早期、後期の脳カウント変化、左下、右下がそれぞれ早期、後期の脳SPECT像

解説は準備中
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Update: May 27/98